2021.05.01.東京海上日動 Challenge Stories~人生は、挑戦であふれている~

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さだまさしさんが『緊急事態宣言の夜に』を語る (2021/05/01 放送)

今週は、さだまさしさんをお迎えしました。

さださんは4月21日、セルフカバーアルバム”新自分風土記”シリーズの第3弾『さだ丼~新自分風土記Ⅲ~』をリリース。今回は「関白宣言」などの70年代の名曲から昨年の紅白でも披露された『奇跡2021』まで、まさにベスト・セルフカバー・アルバムという感じの選曲になっています。

「スタッフがこの辺ちょっと歌い直して欲しいなぁっていうものを。今のライブが好きだっていう人が増えてきたので、じゃあ今の声でちゃんと歌っとかないとなぁって」

セルフカバーのレコーディングは、緊張して普段の歌入れよりも時間がかかる曲の方が多かったという さださん。その理由をこう話してくれました。

「僕はあんまり さだまさし聴かないんですよ、普段。だから、自分の歌いたいように歌うから、メロディーが行きたい方へ行って。行ってるうちに、あ、こっち歌いまわしの方が好きだなぁって。いわゆるフェイクする、崩すっていうのはヤだけど、メロディーが変わっちゃったりしてるんですよ」

「それをねぇ、知らん顔してスタジオで歌ったら、スタッフが、ちょっとこっち来てください、とか言ってね。ちゃんと自分の歌聴いてください!あなたはこんなふうに歌ってます、オリジナルで! いや、オリジナルはそうだろうけど、コンサートでこう歌っちゃってるからいいんじゃない?このメロディーで…ダメです!みんなこっち聴いてるんですから! はい、わかりました…すんごい叱られた。何度も」

「みんなが知ってる曲だけに気が抜けない。ずっとこうやって聴いてきてくれたんだから、ここで期待を裏切りたくないなっていう感じですかねぇ」

そんな『さだ丼~新自分風土記Ⅲ~』の1曲目に収録されているのは、大ヒットドラマシリーズ『北の国から』のメインテーマ「北の国から~遥かなる大地より~」。さださんは歌詞のないこの曲が出来た経緯をこんなふうに振り返ってくれました。

「(ドラマの脚本の)倉本(聰)先生がよくぞ、さだまさしを選んでくださったなと思ってね。俺、九州(出身)だから、北海道の雄大さなんか歌えるわけがないと思うじゃない?」

「実は、倉本先生のお宅に呼ばれて、1回目と2回目のビデオを見せられたんですよ。それで、僕はもうホントに涙が出てきて。先生これ凄い!って言ったら、あ、こいつはお世辞言わないからたぶんホントに感動してるよって。冒頭の部分から先生が何度もビデオでキュルキュルキュルって戻してね」

「それで、その現場で作って、まぁまぁまぁ途中ぐらいまで出来てましたよね。で、タラララララ〜♪っていくかどうか迷ってる時に、夜に役者さんたちが帰ってきて、出来たのかぁーい?とか言われながら…歌を何度も歌ってるうちに、まぁまぁこんな感じで作りますわ、って言って。でも、そのあと出来なくてね。歌詞が出来なくて。で、その時に、もうアとウで行こうと決心をして。それで、先生これ歌詞なくていいよね?っていうところで、ようやくレコーディングできましたね」

さださんは今の時代の音楽のありかたについてこうおっしゃっていました。

「(サブスクより)買って聴いて欲しいねぇ。持っておきたいっていう価値観を与えられなくなった僕らの責任なんだろうけど、持っていたいなって思わせるだけのものを僕らはいつの間に手放したんだろう?っていうのはミュージシャンとして反省しますけどね。でも、多くのシンガーはそれでは生活できない。ダウンロードでは生活できないんですよ」

「これがいいものか悪いものか?で音楽の価値って決まるんじゃないんですよ。好きか嫌いかで決まるんで。新しい古いっていう考え方は間違いだし。上手ヘタで好きになるか?っていうと、上手はぜんぶ好きになるかっていうと決してそんなことはない、ヘタだから嫌いになるわけじゃない。音楽っていうのはそれほど自由なんですよね。だから、受け手も自由だし、送り手も自由な分、その自由さを保証するには、ミュージシャンを殺さないためにはやっぱり生活させていかなきゃいけない」

「ちょっとえげつない話になりますけど、それにはやっぱりレコードなりCDなりが売れるっていうこと。場所を失ったミュージシャンをどうやって俺たちは応援していったらいいんだろう?若いミュージシャンをどうやって救うのかなって。ライブで頑張れ!って言ってるけど、コロナでまったく閉ざされたでしょ?つまりこれは有事だったですね」

そして、コロナと言えば、さださんは今年2月に『緊急事態宣言の夜に ボクたちの新型コロナ戦記2020』という本を発表。昨年の4月には「緊急事態宣言の夜に」という曲も書いていますが、この曲に込めた想いをこう語ってくれました。

「歌って自分を追い込む作業なんですよね。簡単なことを言うと、外に出なきゃいいんですよ。籠もってれば(コロナに)かからないんですよ。だけど、籠もって生きていられる人ばっかりじゃない じゃないですか。社会インフラに携わってる人たちなんか、出ていかないわけにいかない。こういう人たちにどうやって感謝したらいいんだろう?と、初めて社会インフラというものに僕は冷静に気付かされたし、ありがたいなぁ…と思うし」

「で、こういう働いてる人たちに対して、俺はどう生活していけばいいんだろう?っていうふうに追い込んでいってみたんですよ。まぁ、わかりやすく言うと(この曲の歌詞の)お前のお袋死なせたくないんだ、っていう一行ですよね。つまり、お前がかかるだけではなくて、お前の向こうっかわにいるお母さん、お父さんが、もしかしたらこれで死んじゃうぞ? だから、そこを考えようよっていう。じゃあ、かからないために俺たちに何ができるか?っていうことをもっと真剣に考えなきゃダメだよ、っていう想いだったのかなぁ。かからないっていうことは自分のためじゃないんですよ。人のためなんですよね」

「これ見過ごしたらダメでしょ、っていう衝動のようなものがありましたよ、やっぱりね。あれを歌うにあたってはね。(昨年の)緊急事態宣言って4月7日に出たんですよ。で、それはたまたま僕の母の命日で。花散らしの風の強い日に、母はフラっといなくなるように、買い物に出るようにいなくなったんですけどね。今日はお袋の日だなと思ってもちろんその日を過ごしてたんだけど、その日に緊急事態宣言が出たでしょ?だからお袋が生きてたらこれどう捉えたかな?と思って、僕ざぁぁぁぁっとね、エッセイみたいなのを書いたんですよ。インスタに載っけたんですよ」

「そしたら、それを読んだうちのスタッフが、これを歌わなきゃダメでしょ、ってやっぱり言ったね。歌わないの?って言われたから、歌うべきかな?って言ったら、べきでしょ!って。やっぱそうかぁ…すぐかな?って言ったら、今歌わなきゃダメでしょ、って言われて。9日の日に出来上がった感じですかね」

そして、さださんはその翌日の配信で「緊急事態宣言の夜に」を披露しました。

「で、ちょうど10日が僕の誕生日で。もうみんな鬱積してて。コンサートもできないし、キャンセルキャンセル、延期延期で。無料配信で『誕生日だから生でさだまさし』っていうのをやったんですよ。で、そこで、どうしようかな、昨日作った歌を歌うのもなぁ、勇気いるなぁ、まだ出来上がってないし、言葉もメロディーもちょっと怪しいし…。ま、メロディーはこういう歌はあってないようなもんなんだけども、ちょっと練習しときゃよかったな、って思ったけども(配信は)始まっちゃってるんで」

「そしたらスタッフが、アゴでこう、歌え!歌え!って、みんながサイン出してくるのね。追い詰められましたね、僕。じゃあ歌うかあ!つって歌ったのね。ところどころ音外したりしながら。だけども、歌ってこういうもんだろなぁと思いながら、僕歌いましたよね。たぶんこれはもう2度と歌わないなぁと思いながら。こういうものは、何度も何度も歌ったりレコーディングしたりするもんじゃない種類の歌だから。『緊急事態宣言の夜に』は声震えましたね、やっぱり」

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